〔III〕藤田謙編『南部紫之由来』
盛岡・草紫堂刊

昭和12年6月15日 発行 より抜粋


南 部 茜 染 及 南 部 無 名 塗 の 事

 南部茜根染は、上記紫根染と共に往昔より、吾が南部地方に独特に発達相伝ありたるものにして、技法は全く紫根染と同様にして、只用うるに紫草の根に代る茜草の根を以てし、而して一入の手数を要する違いあり。その複雑微妙なる色彩感覚より成る特種の赤色は、品質の雅味をいや深からしめ、而も染色の頗る堅牢なることゝ相待って紫根染の姉妹銘産品たる名に恥ぬものである。

【中略】

 次に南部無名塗は、昭和10年堂主の創案発明に係り、専売特許第117391号を獲得せるものにして、紫根染、並に茜根染々布、其の他一般染織製品の布帛を、適当の塗物素地に張り附け、更に之れを該染織製品の模様を活して拭漆せることを特徴とし、作るに、高倉帝御時代より現われたる拭漆技法を以てしたるものにして、極めて郷土色に富み、且つ高尚にして雅味深きは勿論、品質の著しく堅牢なるはその誇りとするところである。

【後略】

【p.p.16-19】
南部無名塗のお盆
(註)この無名塗は、これを応用し"お盆"として旧岩手日報社40周年記念のお引き物に採用され、当時小学5年生だった筆者もその製作を手伝った記憶がある。頗る堅牢、雅味の深いもので、大方の好評を拍した。その他タバコセット、文箱、文机、下駄等の試作も試みたが、実用化されたのはこの"お盆"だけで終ってしまったが、若し企業化出来ていたならもう一ツの南部の名産品となり得たのではないかと、今でも残念に思っている。